令和6年度診療報酬改定後のベースアップ評価料のインパクトについての調査
当社(日本システム技術株式会社/略称 JAST)は、独自に保有しているレセプトデータを中心としたメディカルビッグデータ『REZULT』を基に、令和6年度診療報酬改定時に導入されたベースアップ評価料について調査しました。
2024年6月より診療報酬改定が行われました。この中で、昨今の物価上昇に伴う他業種の賃上げに伴い、医療従事者においても賃上げの対策が取られることが決定されることとなり、新たにベースアップ評価料という評価制度が導入されました。
本調査においては、2024年6月から2025年5月の期間に発行された医科レセプトを対象にベースアップ評価料算定の実態について調査しました。
ベースアップ評価料(以下「ベア料」)とは、医療従事者のうち医師あるいは事務以外の医療従事者の基本賃金の底上げを図る目的で導入され、看護師や歯科衛生士、作業療法士、介護福祉士などが適用対象として挙げられます。
本調査ではREZULTで公開している「医科レセプト」の情報を元に、ベア料の患者一人あたりの年間医療費と、ベア料が算定されている医療機関の病床数別・エリア別・診療科別の傾向について調査しました。
【集計条件】
利用データベース:当社の保有するレセプトデータベース(約1,100万人 2025年12月時点)
調査対象:
2024年度の診療報酬改定後におけるベア料(外来・在宅ベア料(Ⅰ)、(Ⅱ)、入院ベア料)の算定状況について、医科入院・入院外、DPCレセプトデータを対象に調査
調査期間:
2024年6月~2025年5月診療分(12か月分)
参考資料:
令和6年度診療報酬改定【全体概要版】(https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001251533.pdf)
令和6年度診療報酬改定の概要【賃上げ・基本料等の引き上げ】
(https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001251534.pdf)
(令和7年度第9回)入院・外来医療等の調査・評価分科会
(https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001544342.pdf)
【REZULTのデータソース】
・保険者由来のレセプトデータを中心としたデータベースです。
健康保険組合、共済組合のデータを収載しています。(新生児~働き世代中心)
・患者の追跡性に優れ、大規模病院~クリニック、調剤薬局、歯科と幅広く収載されています。
1 | 患者一人あたりの医療費のベア料の割合
まず、患者一人における医科外来の医療費に占めるベア料の割合について調査しました。
なお、調査対象は医科の医療機関に限定しており、いずれもREZULTにて保有するデータベースに登録されたものを対象としています。
患者一人あたりの医療費としては年間で138,443円、このうちベア料算定患者に限定した際のベア料の割合は0.4%となり、金額にすると565円となりました。(図1)
現時点では算定に踏み切っていない医療機関もあるため、今後は増えることも予想されます。
【図1】患者一人あたりの医療費におけるベースアップ評価料の割合
※対象期間にベア料算定があった患者におけるベア料の割合を対象としている。
※(医科総ベア料(円))÷(医科総患者数)=(患者一人あたりのベア料)を算出している。
併せて、外来・在宅ベア料と入院ベア料の比較も行いました。
外来・在宅ベア料については年間で143円で割合にすると0.2%、入院ベア料については年間で7,402円で割合にすると0.8%という結果となりました。(図2,図3)
外来と入院では入院時の方が医療費に含まれるベア料の金額・割合とも大きいことが分かります。
【図2】外来・在宅患者一人あたりの医療費におけるベア料の割合
※(外来・在宅総ベア料(円))÷(外来・在宅総患者数)=(外来・在宅患者一人あたりのベア料)を算出している。
【図3】入院患者一人あたりの医療費におけるベア料の割合
※(入院総ベア料(円))÷(入院総患者数)=(入院患者一人あたりのベア料)を算出している。
2 | 病床数別一医療機関あたりのベア料点数
次に、病床数別で一医療機関あたりのベア料に違いがあるのか調査してみました。
まずは病床数別にどのくらいの医療機関がベア料を算定しているのか調査しました。
無床診療所ではベア料を算定していない医療機関のほうが多い傾向にありますが、1~19床ではおよそ半数、20~99床ではおよそ8割、100床以上の医療機関になると
9割以上がベア料を算定していることがわかりました。(図4)
【図4】病床数別ベア料算定有無医療機関の割合
※病床数については、0床、1~19床、20~99床、100~299床、300~399床、400~499床、500床以上の7区分に分割している。
続いて、病床数別一医療機関あたりのベア料について調査しました。
一医療機関あたりのベア料は病床数が増えるに従い、算定点数も増える傾向にあることがわかりました。(図5)
特に病床数が多くなるほどその傾向は顕著に見られ、300~399床では88,375点、400~499床では179,484点、500床以上では501,505点となっています。
病院規模が大きくなると受け入れている患者数、在籍している医療従事者数も多くなる傾向があることからベア料も大きくなっていると考えられます。
【図5】病床数別ベア料算定点数
※病床数については、0床、1~19床、20~99床、100~299床、300~399床、400~499床、500床以上の7区分に分割している。
今回はベア料の算定状況の調査を行いました。
外来・在宅ベア料と入院ベア料の比較については、医療費としては外来と比較して入院の方が大きいということが分かりました。
また、今回の調査で病床数別ベア料算定有無医療機関の割合について、顕著な傾向がみられました。
厚生労働省の発表ではベア料の算定については、令和6年度に、+2.5%、令和7年度に+2.0%のベースアップを実施し、定期昇給なども併せて前年を超える賃上げの実現を目指しており
外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)の届け出を病院の約9割、診療所の約4割が行っています。
0床の医療機関ではベア料を算定している医療機関が約4割、病床数が多くなるほどベア料を算定している施設の割合が大きくなっている(100床以上の医療機関においては9割を超える)ことから、
当社のデータでも厚生労働省の発表と同様の傾向として確認することができました。
一方で、ベースアップ評価料を届け出ていない医療機関も存在しており、主たる理由として「届出内容が煩雑なため」、「次回改定後もベースアップ評価料が存続するのか不明のため」
が挙げられているため届出内容・方法の簡略化の対策が必要となるほか、次回の診療報酬改定時以降も安定的にベースアップ評価料の算定ができる仕組みの構築が必要となりそうです。
当社では、データヘルス計画の策定支援や事業実施支援の一環として、医療費の分析や分析を基にした保健事業のコンサルティングを行っています。
他にも、1,000万人を超える匿名加工済みのレセプト・健診データ等の医療リアルワールドデータによる地域差分析やペイシェントジャーニー(※1)などアドホック分析やデータの販売を行っております。
※1 患者が病気を認知し、医療機関へ受診、そして治療となるまでの一連のステップ。
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